好き度:★★★☆☆「No Country for old men」
麻薬の取引現場から200万ドルをネコババした男。その男を執拗に追う殺し屋。
男をなんとか助けたい年老いた保安官。とことん怖い追跡劇です。
やはり、殺し屋役のハビエル・バルデムの怪演ぶりが光りました。怖いのなんのって・・・。
(しかし、おかっぱ頭はやはりユーモラスではありました
)
家畜を屠殺する銃をつけた酸素ボンベを持ち歩いて、いとも簡単に人の額を打ち抜く。
しかし、殺しそのものの場面が怖いのではなく、殺すまでの時間が異様な緊迫感なんです。
私、最初から最後まで緊張しっぱなしで、終演後は異様に肩がこってました(苦笑)
なぜに、こんなに恐ろしいのか。
それは、彼の考えていることがまったく理解できないから。
何を規範として生きているのか?なんのために殺し続けるのか?
殺すの?殺さないの? ギリギリまでまったく読めない。
法律や世間一般の常識を超越していて、
お金のために殺すのでもなく、かっとなって殺すでもなく、
かといって殺しに快楽をおぼえるサイコキラーでもなく。
人は、理解不能なものを前にすると不安を抱き、
なんとか、自分達の理解できる言葉や符号でカテゴライズして安心しようとする。
しかし、時として、そんな試みがまったく通じないことがものがあると思い知らされる。
それこそが、最大の恐怖。
「考えていることがよくわからない犯罪者が増えた」保安官の嘆きは、現代社会の苦悩であり、
殺し屋シガーは、現代社会が抱える恐怖そのものなのでしょう。
原題「No Country for Old Men」
古きよき時代の常識を持ち合わせている人々には、もはや現代の国には居場所がないってことかな。
綿密に計算されつくした映像はすばらしく、ひとつひとつに重要な意味があり
まばたきできないくらいの集中力を必要としました。
コーエン兄弟を絶賛する人の気持ちが初めてわかったような気がします。
まず、最初に保安官補を絞め殺すシーンでやられました。
首を絞めて、窒息し、絶命するまでの延々とみせるわけです。
床に残されたもがき苦しむ保安官補の靴が擦れた跡をクローズアップして、
殺しの残忍さを改めてみせつける。震え上がりましたよ。
物語は不条理そのもので、ラストも「え?ここで終わるんかい!」と突っ込みました。
私の好きなテイストではなかったです。
ただ、「あれはどういう意味だったのかなあ〜」と解釈できない点が多々あり、
しばらくこの映画が頭から離れないと思います。
ある程度、解釈がまとまった時点でまた感想を書いてみようかと
でも、そういう試みをすること自体が無駄な映画なのかという気もする。