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『母なる証明』


好き度:★★★★★

「Mother」
ある田舎町で起こった殺人事件の容疑者とされた一人息子トジュン(ウォンビン)の
無実を証明するために、真犯人探しに奔走する母親(キム・ヘジャ)を描く。

ポン・ジュノの天才なる証明。

計算され尽くした演出に魅せられ、最初から最後まで130分、スクリーンに釘付けだった。
犯人探しのくだりはサスペンスフルで、エンターテイメントとしても楽しめ、
同時に「母親」という生き物を徹底的に描く。
どのカットも無駄がなく、それとなく張られた伏線が見事に最後に収斂される。
なんという完璧さ。凄い映画だった。
見た直後は★4かなと感じたけれど、見てから1週間ぐらいこの映画のことが
頭から離れなかったので★5にしてみた。

オープニング。
枯野原で、音楽にあわせて奇妙に体を揺らし踊る母親の姿。
放心したかのような空ろな表情。これで一気に心つかまれた。

ざくざくと薬草を切る音。手元より外にいる息子が気になって気もそぞろな母。
見ている私は、いつ母親の指がざっくりいくかわからなくてずっとドキドキしていた。
そして、唐突に息子が車にはねられる。
と同時に、お約束のように指を切る。しかしそれもいとわず、脱兎のように飛び出す母。

このシークエンスだけで、母親がいかに息子を溺愛しているかがわかる。

息子は外見は大人だが、精神は少年のまま成長が止まっていて、母親はほうっておけない。
その純粋なくりっとした目は、母のそれとよく似ている。
「目がそっくりね」それが母の自慢なのだ。

目にいれても痛くないほどの息子が突如、殺人事件の犯人として逮捕される。
「息子が人を殺せるはずがない」
息子の無実を信じ、真犯人を探すためにやみくもにつきすすむ母。

疑わしい人物が次々に現れ、それを追っていき、
真実にたどりつくまでの過程は緊張の連続だった。

特に面白いと思ったのは液体がゆっくり流れるシーンが度々繰り返されるところ。

立小便をする息子のそばで、母親が流れる小便を見つめるシーン。
忍び込んだ息子の友人の部屋から逃げ出す時に、ペットボトルを倒し、
寝ている友人の指先に、水がゆっくり流れるシーン。
それらは血を連想させ、クライマックスにつながる。

母親を演じたキム・ヘジャの演技は、鬼気せまるものがあり、
冷静にみれば、狂気とも思えるその行動の数々を、
「母という生き物はこういものかもしれない」と、強引に納得させられてしまうのだ。

息子に対する愛情だけではなく、
息子をだました友人に対しても、「おなか、へってない?」と食べ物の心配をする。
そして、容疑者として逮捕された、自分の息子と同じ知的障害者の青年に対し、
「あなた、お母さんはいるの?」と涙を流す。

そして、トジュンを演じたウォンビンも素晴らしかった。
純粋なガラス玉のような眼は美しいが、まったく感情が読み取れないのだもの。
面会に来た母親に対し、彼女が忘れたかった過去を突然思い出し、
片目を隠しながら言うシーンは、怖かった。
そして、最後に母親に針を差し出すシーン。
彼は全て知っているのか?それとも、知らないのか?
母親もわからずいたたまれなくなるほど
その表情には、なんの感情の揺れもみえず、観客は想像するしかない。実に見事!

そして、ラストシーン。オープニングはここに通じるのか!と。

逆光の中、一心不乱にゆらゆらと踊る母親の姿。
メランコリックな音楽が、途中で転調した瞬間に涙がでた。
一切を背負い、これからも母親として生きていくしかない。

その人生に胸が締めつけられる。
この踊るシーンは、「歩いても歩いても」で、蝶を追う樹木希林ともかぶり。

何もかも忘れられるツボが本当にあるといい・・・・。

母親の業の深さを、生々しく見せつけられ、窒息しそうになりながらも
この映画に囚われて、しばし、気持ちが戻らなかった。
ポン・ジュノ監督作品は、これからも楽しみですねー!

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『バーダー・マインホフ 理想の果てに』


好き度:★★★★☆
「Der Baader Meinhof Komplex」
1960年代後半から1970年代にかけて、極左地下組織として世の中を震撼させた
ドイツ赤軍(RAF)の10年間の軌跡。

今年度アカデミー賞外国映画賞にドイツ代表としてノミネートされた本作品。
実話を基にした150分にもわたる力作で、私は「おくりびと」より見応えのあるこちらのほうが好み。

冒頭、反米学生デモが暴動にかわり、
警察によって武力弾圧をうけるシーンは、実際その場にいるかのような臨場感あふれるもので、
音楽も盛り上がり、やけに床が揺れるな〜、低音が響いてるのか?と思ったら地震だったよ!
かなり大きかったと思ったのですが、だれも動じず上映続行・・・。
いや〜、私もう少し揺れが続いていたら逃げ出す勢いでしたよ。怖かった(涙)

ベトナム戦争を始めたアメリカ帝国主義に反発し、
犠牲になっている人々を解放しようと自分達の信念を実現するべく行動しようとする若者達。
間違った体制を自分達の手で変えたい。そんな一種の熱につつまれていた時代だったんだね。
ドイツの場合は、ナチスの暴走を許した悔恨の念が、さらに彼らを突き動かす原動力となる。
「不条理な出来事に対して、断固抗議し、行動にうつさなければならない。」
血気盛んなグループのリーダー、アンドレス・バーダー(モーリッツ・ブライブトロイ)、
彼の恋人のグドルン・エンスリン(ヨハンナ・ヴォカレク)が、血の通った演技でとてもよかった。
彼らが語る理想は、確かに青臭いのだけれども、
正論である部分もあり、全否定はできないんだよね。
社会を変える必要があると感じていたジャーナリストである
ウルリケ・マインホフ(マルティナ・ゲデック)も、グループに身を投じることになる。

ここから彼らが起こす反社会的行動の数々が怒涛のように描かれる。
銀行強盗、誘拐、爆弾テロ・・・・。
ただ情熱のおもむくままにバーダー達が起こす行動に、
マインホフがジャーナリストのスキルをもって、理論や思想を世間にむけて発信し、
それらの行動に意味を与える。
彼らの暴力的アプローチには共感を持つことはできないのだけれども、
何かに突き動かされるように破壊的行動を繰り返す彼らから目が離せなくなる。
一体、彼らが目指すもの、行き着く先はどこなのかと・・・・。
最初はうまくいっていたが、主要メンバーの逮捕から徐々に歯車が狂いはじめ、
当初描いていた理想とは、RAFの行動はかけ離れていき、破滅へ向かうことになるのだが。

体制側に反抗する一手段として、時として武力闘争が必要なこともあるかもしれないが、
手段ではなく、それ自体が目的となってしまった彼らの暴走にはやはり感情移入はできない。
監督は彼らをヒーローのように扱うことなく、
あくまでもおこった事実を冷静な視点で描ききっているからだと思うが、
自分の命を賭け、無謀なテロ行為に身を投じていくのは彼らの自己陶酔にしかみえないのだ。
大衆の賛同を得て巻き込むことにより、社会の変革への大きな流れをつくり
体制を変えていくのが革命のはずなのに・・・。
最終的に当初の理想とはかけはなれたところで、破滅していった彼らの末路にため息をつく。
と同時に、彼らがあの時代に放った凄まじいエネルギーにどこか惹かれるのだ。

いぶし銀のさすがの演技をみせたブルーノ・ガンツ演じる刑事庁長官が呟く台詞が心に響く。
「賛同するわけではない。だが、我々は、彼らの動機を理解しなければならない。」

最近、「愛を読むひと」「セントアンナの奇跡」「縞模様のパジャマの少年」と、
ドイツの歴史に触れる映画を見ることが多かったのだけれど、この作品が一番好きだな。

『ハーヴェイ・ミルク』


好き度:★★★★☆
「The times of Harvey Milk」
ハーヴェイ・ミルク氏の活動と暗殺をおったドキュメンタリー映画。
1984年アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞受賞。

・・・・どうでもいい話なんですが、アップリンクに行くと、つい
「どの椅子が一番すわり心地がよいのか」目移りしてしまい、挙動不審になっちまいます。


「ミルク」のもととなった本作品。当時のニュース映像と関係者のインタビューで構成。

「ミルク」の冒頭でも使われていたと思うのだけれど、二人の暗殺を発表する女性のシーンから始まる。
女性の声は震えていて、周りに群がる人たちから驚きの叫び声があがっている。

「ミルク」では、彼のプライベートなシーンも描かれていたけれども、
こちらはパブリックにおける彼がメイン。
インタビューに快活に応える実際のミルク氏は、ショーン・ペンより華がある(驚!)。
彼が語る言葉には人を惹きつけるものがあり、誰もが耳を傾ける。
この人って、テレビメディアの使い方が非常にうまい人だったんだな〜。




選挙参謀だったアンが、「ミルクと一緒に働くのは大変だった。」と語っていた。
時々、とても感情的になることがあったそうな。そのへんは「ミルク」ではよめなかったので、
なかなか印象深い証言でした。




暗殺された日のニュースフィルムは非常に臨場感があり、当時の様子が伝わってくる。
ミルクと市長が暗殺された後、時間をおかずにテレビカメラが建物内にはいったみたいで、
情報が錯綜し警察が混乱しているさま、布がかけられた遺体が搬送される様子
そして、ダン・ホワイトがつかまり警察に連行される直前まで映し出されていた。

ダン・ホワイトは無表情でおとなしく連れて行かれるんだよね。
どこから見ても、清潔でまっとうでまじめな模範的市民の姿・・・。
演じたジョシュ・ブローリンは本当にそっくり〜!



その後の裁判で公開されたダンが泣きながら警察の取調べを受けた時のテープを聞くと
ますます、この人があんなだいそれたことをやってしまったのが信じられないのよね。


暗殺のくだりになると、それまで笑顔でミルクのことを語っていた人たちが、涙を抑えきれなくなる。
当時、かけがえのない存在を失った喪失感で、皆、沈黙だったそうだ。
彼らの死を悼むパレードは、ろうそくの光で道路が輝き、静かな哀しみで満たされていた。
この後、実際、何人もがカムアウトしたそうだ。
ミルクが訴え続けてきたメッセージは、確実にみんなに伝わっていたんだね。

そして、「ミルク」では描かれなかったけれど、ダン・ホワイトに禁固7年という判決がくだった時に
起こった暴動の様子まで克明にフィルムは記録している。
暴徒と化した市民の怒りの激しさは、追悼パレード時と対照的。

「市長のみを殺していたら、死刑になっていただろうけれど、
残念ながら、まだゲイを殺すことが世の中のためになると思っている人間がいっぱいいるんだ。
私も、ミルク達のグループと知り合ってなかったら、今でもそう思っているだろう。」
と、労働組合長が語った言葉が重い。

約30年経った今の世界を目にしたら、ミルクはどう思い、何を語るのかな。
彼が思い描いていた社会にどれだけ近づいているんだろう・・・・。

『フロスト×ニクソン』


好き度:★★★★☆
「FROST/NIXSON」
ウォーターゲート事件によって大統領辞任に追い込まれて以来、
沈黙を守り続けたリチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)。
そんなニクソンにインタビューを申し込んだテレビ司会者のデビッド・フロスト(マイケル・シーン)。
名誉の回復と政界復帰を目論む男と、テレビ界での全米進出を狙う男。
野心とプライドをかけた両者の闘いに、全米4500万人が注目した。
勝ってスポットライトを浴びるのはどちらか一人・・・・!

大臣経験者の、ある政治家の講演会に行ったことがある。
テレビで見る彼は、権力志向が強いタイプの政治家であまり好感がもてなかったのだけれど、
実際に話をきいてみると、話が非常にうまく、その場の流れをすんなりと自分の側にひきよせ、
強烈な個性にいつのまにかひきこまれてしまったのよね。
「政治家ってやっぱり特殊な人なんだな〜。」と。強い磁力を放っているかのよう。

インタビューの冒頭、赤子の手をひねるかのようにフロストの質問を軽くかわし、
すべて自分の功績話にすりかえ、饒舌に話すニクソンを見て、そのことを思い出した。
老獪な政治家であり、そのうえ弁護士出身で口が達者なニクソンに
なすすべもなく最初は圧倒されるフロスト。

どちらも、負ければ全てを失う背水の陣をしいての真剣勝負だから、
それはもうキリキリして、恐ろしいほどの緊張感!!
リアリティあふれるシーンになっているのは、
フランク・ランジェラとマイケル・シーンの迫力ある名演技はいうまでもなく
固唾をのんで二人の対決を見守る両陣営のブレーンの渋い演技によるところも大きい。
(ケヴィン・ベーコン、オリバー・プラット、サム・ロックウェル、マシュー・マクファディン、皆いい!!)
ニクソンの本を何冊も書いているジェームズ(サム・ロックウェル)が、
「ニクソンは大嫌い」だから握手なんてするもんかといいつつ、初めて彼に会ったときに
そのオーラに圧倒され思わず手をだしてしまうシーンに笑ってしまいました。

全4回のインタビューのうち、3回はニクソンの圧勝。

そして、いよいよ「ウォータゲート事件」の核心にふれる4回めの収録の前に、
フロストにかかってくるニクソンからの1本の電話。

勝利を確信しているはずのニクソンが、お酒に酔っているとはいえ、心情を吐露するシーンは、
それまでと違いあまりにも弱気で、そのいきなりの落差に「なんで?」と思ったのだけれども
後から考えれば、
負ければ全てを失い、もやは二度とはいあがれないだろうと恐怖と焦燥感をわかちあえるのは、
周りにいる腹心の部下でも家族でもなく、
同じような立場の相対するフロスト、ただ一人であったんだろうな〜と。

最終的に、自分が行ったことは、「非合法であった」と認める発言を引き出されてしまったニクソン。
その一言と、テレビがまざまざと映し出した「敗残者」としての悲哀に満ちた表情のインパクトで
それまでのインタビューで彼が誇らしげに語ったことは、人々の印象には残らない・・・・。
テレビの力とは、なんと残酷。

そこにいるのは精力的で饒舌な元大統領でなく、ただ、放心状態になった孤独な老いた男で
その姿になぜか胸をうたれて泣けてしまったよ。

闘いが終わり、最後に二人が再会してニクソンがフロストにかける言葉が印象ぶかい。
「社交的でコミュニケーション能力に長け、人に好かれる。君こそが政治家にむいてるんだよ。
思索が好きな私が、ジャーナリストになるべきだったのかも。」
政治的な功績は小さくないのに、歴代大統領の中でも嫌われ者なんだよね。
この映画を見て、あらためて彼のことを知りたくなってしまった。

ちなみにウォーターゲート事件ってそもそもなんのために、ニクソンが起こしたのか?
いまだにはっきりしない。
彼は、あまりにも中国に近づきすぎたため、それをよしと思わない勢力によってはめられたと、
とある人が言っていたけれども果たして真相はいかに・・・。

『フィッシュストーリー』


好き度:★★★★☆
1975年、世に出るのが早すぎたパンクバンド「逆鱗」はまったく売れずに
最後に「FISH STORY」という曲を残して解散。
その後、1982年、2009年と時は流れて2012年、
彗星激突のため、地球は滅亡の危機にさらされていた・・・。

すっごくいい気分になれる映画でした!ストーリーテリングがとっても巧みなんだよね。
伊坂幸太郎の本はあんまり読んでないんだけれど、この原作は読んでみたい。

時代の違う3つのお話が描かれる。
1975年 「フィッシュストーリー」を作ったパンクバンド逆鱗とプロデューサー(大森奈朋)。
1982年 友達にアゴでこき使われる気弱な大学生(濱田岳)。
2009年 突如シージャックに巻き込まれた女子高校生(多部未華子)と
       正義の味方になりたかったシェフ(森山未来)。

時間軸の違う話が絶妙に交錯される構成がとても面白いし、
どのエピソードも、ふんわりとした温かさを感じる。この監督の持ち味なのかな?
しかも、登場人物の誰もがとっても魅力的。

一番びっくりしたのが、森山未来君のアクションの素晴らしさ!
小さい頃からダンスをやっているだけあって、体のキレが凄く、
一連の動作はまるで踊っているかのようにエレガント。
あれだけ、足が高くあがるキックができる人はなかなかいない(笑)
「逆鱗」ボーカル役の高良健吾君も、つい目がいってしまう不思議な引力を感じたし
売れない「逆鱗」の音楽性を信じてサポートするプロデューサーの
大森奈朋が懐の深いいい男を演じてるの。本当に色気があってうっとりします〜

そして、斉藤和義プロデュースの「FISH STORY」がとってもいい!
この映画の主役はまさにこの歌 
なんせ、「いつか地球を救う(?)」歌なんだもの(笑)
血がかよっていて、パワフルで、心に響くの。

バラバラにみえたエピソードが、ラストでつながっていくところは爽快!
なんとなく展開は予想できるのだけれど、それでも、じんわりさせられる。

空疎な言葉を吐くだけの人よりも
報われないかもしれないけれど、誰にも認められないかもしれないけれど、
自分のやるべきことを一生懸命にこなしていく人のほうがはるかに素敵。
そんな人々の想いは、いつかきっと誰かに伝わり、それが「世界を救う」のだ!

そう、こういう フィッシュストーリー(ほら話)があってもいいじゃない、ね? 

『ベンジャミン・バトン−数奇な人生−』


好き度:★★★★☆
「The curious case of Benjamin Button」
80歳代の体で誕生し、年とともに少しずつ若返っていく運命のもとに生まれた
ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)の人生を描く。

人とは違う時を刻む男の人生という風変わりなストーリー&素晴らしい映像美術。
まるで御伽話をみているようで、長尺なのにまったくあきませんでした。
ロシアのホテルの内装なんか、とっても素敵だったな〜。
ただ、人間ドラマには、期待していたほど深く感動はしなかった。
おなじエリック・ロスが脚本を書いた「フォレスト・ガンプ」を見たときの感覚と似ているかな。

CGと特殊メイクの素晴らしさに、とにかく度肝をぬかれました。
ブラッド・ピットの顔に、老人の体をくっつけちゃったり、
20代の若さにもどっちゃったブラピは「テルマ&ルイーズ」や「リバーランズスルーイット」に
出ていた素晴らしくキラキラしていた頃の彼そのものでドキドキ。
デイジー(ケイト・ブランシェット)のバレエダンサーの時代も美しかったよ〜
肌のハリや輝きが全然違う!CGってその人の若い頃も再現できるのね・・、びっくりです!

時間がさかのぼってしまう運命を特に嘆くこともなく受け入れているベンジャミン。
「永遠に続くものはない」
人とは違う年のとり方をする故、何かに執着することはできない彼だったのだけれど、
旅を続けていても、節目節目には、デイジーの元に戻っている。
いろんな人と出会い、別れて、その長い旅の果てに
永遠に続くものが自分の人生の中にあったと確信できたんだね。
彼の人生の終わり方はこれ以上ないくらい幸せだと思う・・・。

自分の人生、色々な人との出会いがあるけれど、
一瞬でも交錯する人とのつながりを大切にしていきたいな〜と、珍しく殊勝な気分になりました。

『PARIS パリ』


好き度:★★★★☆
「PARIS」
ムーラン・ルージュの元ダンサー、ピエール(ロマン・デュリス)は、心臓病を患い、
アパートのベランダからパリの街を行きかう人々を眺めるだけの毎日を過ごしている。
姉のエリーズ(ジュリエット・ビノシュ)は、彼の身を案じて同居を始める。
パリの街に生きる様々な人々の日常を描く群像劇。

ボンジュール 
見終わった後、なんだかパリジェンヌ気分に浸りたくなり
雰囲気でシャンパンなぞ飲んでみました(←影響受けやすい

モンパルナス・タワー、サクレ・クール寺院やソルボンヌ大学など、パリの名所が次々に
スクリーンに映るたびに、どこをきりとっても絵になる街だなあ・・・とうっとり。

それぞれ悩みを抱えながらも懸命にパリで生きている人々。

3人の子供の世話と仕事におわれているシングルマザー。
美しい女子大生に恋をし、しかも二股をかけられている歴史学者。
兄に「おまえは普通すぎる」といわれて悩んでしまう建築家。
元女房と同じマルシェで今も働いている八百屋。



やっぱり大きな都市だから、物価も高く「金持ちだけの街」になりつつあったり、
仕事にあぶれた若者も多く、移民の不法入国の社会問題もはらんでいて
決して生きやすい場所ではない。
誰もがどこか満たされなくて、なんだか切ない。だから、誰かと触れ合ってつながりたいと思う。

気になる相手がいたら、じっと見つめる。恋を始めるのは、そう難しいことではないのかも。
感情をストレートに表すのが苦手な日本人としては、そのスムーズさがなんだかうらやましい。
交錯する人々の様々な想いが、空気に溶け込んでパリという街を熟成させているのかな。

これが最後かもと覚悟し、その目にやきつけるかのように
ロランがタクシーに乗ってまぶしそうに見つめる、流れていくパリの風景のなんと美しいこと

いつでも、どこかで、誰かが文句を言っている。
けれども。
ただパリの街に生きている、それだけで人生は素晴らしい。

『人のセックスを笑うな』


好き度:★★★★☆
美術学校に通う19歳の青年みるめ(松山ケンイチ)は、ある時、非常勤講師として赴任してきた
20歳年上の女性ユリ(永作博美)と出会い、自由奔放な彼女に振り回されるうちに、恋に落ちてしまう。
みるめにひそかに想いをよせるえんちゃん(蒼井優)や、親友の堂本(忍成修吾)はそんな彼の恋を見守るが・・・。

私、恋愛映画はあまり得意ではなく。
ロマンチックでハッピーエンドな恋も、最後に心中しちゃうような悲恋物も。
どれも、あんまりピンとこないし、感情が揺さぶられることもめったにない。

しかし、この映画は、久しぶりに自分の恋愛温度がキュイ〜ンと上昇
39歳の女が19歳の青年と恋に落ちるという夢物語ってだからではなく、
いや、それも、ちょっとあるかも。)まっすぐに恋をするってことは、いいものだなあと思い出させてくれる。

刺激的なタイトルですが、ベッドシーンはなく、むしろその前後の二人のシーンを印象的に描いている。
床の上に直接寝るのは、背中が痛いからといって、マットを空気で膨らませながら二人でじゃれあうシーンは、
もうこちらが照れ照れになるくらい、自然で愛らしい。恋に落ちたばかりのふわふわとした高揚感満載

台詞が終わっても、二人のアドリブでいけるところまで続ける手法がとられたそうだけど、
永作博美と松山ケンイチの二人のかけ合いは、本当に自然で、素敵だった。
撮影中は、実際松山君はユリに恋をしていたそうだけれど、そうだろうな〜。
永作博美のスッピンであの愛らしさは本当に凄い。
仔猫のようにきまぐれで、自由で、ちょっと目を離すとどこかに行っちゃいそうなユリを、
とても魅力的に演じていました。

「ねぇ〜。寒いね〜。」というユリのリクエストに応え、みるめが長身の背中を丸めて、
しゅぽっとマッチをすって、石油ストーブに火をつけてあげる。
「ユリは甘えん坊なんだから〜。」とか嬉しそうに言っちゃって。
20歳も年下の男の子が、ちょっと男ぶっちゃう。すっごく、可愛いんですけどっ!!
惚れてまうやろ〜っ
そりゃ、ユリでなくても、いっぱいキスしたくなりますよ!
「だって、触ってみたかったんだも〜ん。」 って気持ちも、わかりますとも!(あ。興奮しすぎ。)

しかし、このフワフワとした楽しい時間は、ユリが既婚者だと、さらりと告白したことで一変。

おそらく初めての恋であるみるめの苦悩が始まっちゃうの。
純情な青年にとって、彼女の言動は、理解の範疇をかる〜く飛び越えているのだから。
もう、みるめは、ボロボロになってしまう・・・・。
電話がかかってきても、出れないように、だって、声を聞いたら会いたくなるからといって
携帯電話をぐるぐるまきに・・・(笑)

そんなみるめを密かに想うえんちゃんも、とっても可愛い

ユリの個展に行った時、いつもは長い髪を白いニット帽の中にいれてるんだけど、それを脱いじゃう。
長い髪をたらして、女としての対抗心をチラリと。(ま。ユリは全然気づいてないんだけど。)
腹いせにギャラリーにだしてあったお菓子を全部たいらげちゃうのだ(笑)

ユリとのことで落ち込んでいるみるめに対しても
「ばっかじゃない!!連絡すればいいじゃん!会いたかったら会えばいいじゃん!」と怒っちゃったり。
彼が自分を見てくれないのは哀しいけれど、落ち込んでいる彼を見るのはもっと哀しいんだよね。
自分の気持ちを抑えて、素直になれず、強がるえんちゃんのいじらしいこと・・・・





嫌になるくらい感情的になって、じたばたして、気持ちが空回りして、へとへとになる。
頭ではわかっていても、心は制御不能。
周りからみたら滑稽で、かっこ悪いことかもしれないけれど。
人を好きになるってそういうことだ。 だから、私はきっと笑えない。

『バンク・ジョブ』


好き度:★★★★☆ 

「THE BANK JOB」
1970年代のロンドン。中古車販売店を営むテリー(ジェイソン・ステイサム)は、
旧知のマルティーヌ(サフロン・バロウズ)から銀行強盗の話をもちかけられる。
借金取りに追いかけられている毎日に嫌気がさしていたテリーは、人生の一発逆転を賭け、
計画実行を決意し、仲間を集める。
地下トンネルを掘り、銀行の貸金庫からの強奪に成功したテリーたちだが、
盗品の中に、王室、政府高官、マフィア、警察を巻き込む秘密が含まれていた・・・・・。

「ウォーキートーキー強盗」と知られる実際に起こった事件ですが
政府による報道規制がしかれ、あっという間に闇に葬られたそう。
この事件の関係資料は2054年まで公開されないのですが、当時の事件の関係者に話を聞いて
脚本を作り、90%は実話ということに驚き

脚本と、緩急とりまぜ最後まで観客をぐいぐい引き込む演出が素晴らしい〜
銀行の貸金庫に忍びこむための地下トンネルを掘るくだりは、
1970年代っぽくアナログなかんじが非常に好み。
仲間同士の無線通信がアマチュア無線家に偶然傍受され、計画が警察の知るところになり、
襲撃を企てている銀行を特定しはじめようとする警察と、それを知らずにトンネルを掘るテリー達。
もうハラハラドキドキしっぱなしでここから映画に釘付けです。

そして、強盗に成功はしたが、現金400万ポンドと宝石の他に、
王室を巻き込むスキャンダル写真がまぎれていたから大変!
テリー達は、MI-5、マフィア、警察から追われる身となり、報道規制も敷かれたため、
孤立してしまうところから、面白さはますます加速。

テリー達は、彼らの手から逃れ、自由と富をつかむことが果たしてできるのか。

重大証拠をつかむために、MI-5が、素人に毛がはえた程度の犯罪集団に強奪させるというのは
いくら自分たちの関与を匂わせたくないためとはいえ、ずいぶんリスクの高い作戦ですよね。
しかも、裏をかかれてしまうということがあきれる・・・(笑)
70年代ってのどかだったんでしょうか〜

舞台となるロンドンの街並みも、雰囲気があって好きでした。
クリスティーの小説にもでてくる「パディントン駅」は、こんなところだったのね〜なんて
楽しめたりしましたし。

『ブラインドネス』


好き度:★★★☆☆ 

「Blindness」
視界に白い光が溢れ、突然見えなくなるという奇病が蔓延し、感染者は施設に隔離される。
極限状態におかれた患者達は徐々に秩序を失い、人間の本性をむきだしにするようになる。
その中に、一人だけ目の見える女性(ジュリアン・ムーア)がいた・・・。

「見えなくなる」それだけで、これほど世界が一変してしまうものなのか。

一人で歩くことも、食べることも、排泄することもままならない。
狭い施設の中に隔離され、食物も足りなくなり、衛生面も劣悪な環境になっていく。
極限状態におかれた人々は、自分の欲を満たすことのみに頭がいっぱいになり、
社会的秩序は失われ、そこには、別の秩序が出現することになる。
すなわち、力のない者は、力ある者に屈服する、獣たちが生きる弱肉強食の世界。
強奪、暴力、SEX・・・人間の尊厳などないかのように本能のままに行動する人間たち。

変わり果てた世界の全てを一人の女性だけが目撃することになる。
彼女は、最初は夫に頼っている献身的な妻にすぎないのが、
見たくないものを目にし、「一人だけ見える」ことの重圧に押しつぶされそうになりながらも、
周りに手を差し伸べ、正しい方向に導く強い女性に次第に変化していくさまが面白かった。

見えなくなったからこそ、初めて見えてくるもの。
そこには、お金持ちも、貧乏人も、健康な人も、病人も、人種も、老いも、若きも、何の区別もない。
ただ見えるのは個人の本質。そこで生まれた信頼と絆は何よりも強い。
それこそが、極限状態における人々が見出した唯一の希望。

途中、感染者の視点からのように、時々映像が白っぽくなったり、輪郭がぼやけたりしたので、
自分まで「見えなくなったの???」と、非常に不安に駆られ、怖くなりました。
その後、自分の目が見えることに、心から感謝し、と同時に、
果たして、自分は本当に大事なものが「見えているのか?」と改めて問いたくなります。

木村佳乃&伊勢谷友介の若夫婦役は、体当たりの演技と違和感のない英語で期待以上。
美しくてスクリーンに映えますね。

注:テーマは深くていい映画ですが、目のそむけたくなるシーンもあり、デートには向きませんぬ。

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